ホリスティック栄養学とサプリメント

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サプリメントは必要か?

現在アメリカでは約半数の人々が、ビタミン・ミネラル・ハーブなど何らかのサプリメント(栄養補助食品)を摂取していると言われています。1994年に定められた「栄養補助食品・健康教育法」によって、サプリメントは医薬品と食品の中間に位置付けられ、消費者が選ぶのに必要な情報をラベルに表示できるようになっています。

日本も最近では“サプリメント・ブーム”と言われるような状況で、利用者が急増しています。ビタミン・ミネラルだけでなく、従来からある健康食品の類を摂っている人を加えるなら、3分の1以上の人々が使用していると思われます。2年ほど前に東京都が行った調査では、約40%の人が、通常の食品の他にサプリメント・健康食品を摂っていました。欧米型の食事に偏り、外食も増え、しかも体調に不安を感じている現代人にとって、薬のような副作用もなく、手軽に摂れるサプリメントは実に重宝なものに映ります。

サプリメント・健康食品についての情報は、テレビ・雑誌・新聞などのメディアを通じて、あふれるほどにもたらされています。栄養や健康についての正しい知識をもたない人々は情報に振り回され、何を選択したらいいのか分からないのが実状です。なかには健康になりたい一心で、勧められるままに、あれもこれもと次々に摂るような人もいます。

サプリメント使用に反対する立場の人たちは、科学的エビデンスが立証されていない、害があるかもしれないといった、さまざまな理由を挙げます。そして食事だけで栄養素は十分摂取できると主張します。しかし、ホリスティック栄養学では―「伝統食を強化する」「栄養療法を効果的に進める補助的手段となる」「現代人に必要とされる栄養素を効果的に補給する」という点から、サプリメントを認めます。

ただしホリスティック栄養学でのサプリメント使用は、原則を厳しく守ったうえで、慎重に進めることを絶対条件とします。ホリスティック栄養学から見ると、世間一般のサプリメント使用には、原則からの逸脱や間違いがかなり見られます。その意味で現実には多くの問題が存在しますが、それがサプリメントを否定する理由にはならないと考えます。

食生活改善の穴を埋める

自然食愛好家や医者の中には、「食事だけで栄養素は十分に摂れるから、サプリメントは必要ない」と言う人がいます。また「サプリメントは自然に反する栄養摂取の方法である」という意見も耳にします。確かに、そうした見解には一理あります。

なぜならかつての長寿村の人々は、サプリメントなどに頼らなくても、食事だけで健康と長寿を手にしていたからです。したがって理屈のうえでは、正しい食事さえ摂っていれば、健康を保つのに必要なすべての栄養素を摂取できるということになります。

しかし「食事だけで栄養は満ち足りている」と言う人を実際に調査してみると、かなりの人に栄養の欠乏が見られます。加工食品・精製食品はできるかぎり避け、有機野菜にもこだわり、タバコやアルコールはいっさい口にしないという人であっても、必要な栄養素を十分に満たすことができていないのが現実のようです。

ホリスティック栄養学では徹底した食事改善を図りますが、それでも常に完璧とは断言できません。知らないところで大きな穴をあけているかもしれません。そこでサプリメントを保険的に上手に用いることによって、無意識のうちにつくり出した欠落部分の穴埋めができるようになります。

また慌ただしい現代社会に住む人々には、昔は必要でなかった栄養素が要求されるようになっています。食事から摂取するだけでは追いつかない栄養素が存在する可能性があります。抗酸化栄養素や抗ストレス栄養素については、現代社会に住む私たちは、かつての人々より多く摂取しなければなりません。状況によっては食事からの摂取だけでは限界があり、サプリメントで補うことが、健康を維持するために必要となるのです。

さらに食事の質を高める

肉体の健康レベルのアップを目指そうとするときには、毎日の食事の質を高めることが不可欠です。ただ単に病気にならない、欠乏症にならないことを目的としているわけではありません。健康にはさまざまなレベルがあり、健康レベルを上げることこそが重要なのです。

私たちの健康を考えるとき、“病気にならない”といった程度の、きわめて低い健康レベルのことだけを対象にしていても話になりません。大切なのは―「いかに健康レベルをアップさせるか」ということです。

最近ではよく“オプティマル・ヘルス”という言葉を耳にします。「理想の健康状態」「最高の健康状態」を意味する英語です。従来からある“ヘルス(健康)”という言葉は、病気に対する健康を意味し、理想的な健康状態を表すものではありません。

アメリカでは20年ほど前から「健康観」が変わってきました。病気でない状態を意味する“ヘルス”から、よりよい健康レベルを目指す“ウェルネス”へ、そして現在では最高の健康レベルを実現し、それを維持していくことを目標とする“オプティマル・ヘルス”へと変化してきました。こうした流れの中で、サプリメントを積極的に利用しようという動きが生まれてきたのです。(※今の米国でのサプリメント使用の在り方は、必ずしも是認できませんが……)

私たちが目指すのは“病気にならない”ことではなく―「どの年齢にあっても、よりよい健康状態・理想的な健康状態を維持すること」です。そのための栄養学的アプローチとして、サプリメントを上手に用いて食事の質を高めることが有効なのです。病気を予防し、老化を遅らせるだけでなく、もっと積極的に健康レベルをアップさせるためにサプリメントを活用して、日常的な食事の質をアップさせることが可能となるのです。

現代人を環境汚染から守る「抗酸化栄養素・解毒栄養素」

昔とは異なり、現代では物質文明の進展にともない環境汚染が進んでいます。大気・水・食べ物から大量の有害化学物質・有害金属が体内に入ってきています。汚染物質は過剰なフリーラジカル(活性酸素)を発生させ、身体にひどいダメージを与えます。

フリーラジカルに対抗するには多くの「抗酸化栄養素」が必要とされますが、それを食事から摂取しようとしても、限界があるかもしれません。汚染物質の解毒・排泄のためには、たくさんの「解毒栄養素」も必要となります。深刻な環境汚染にさらされている現代人にとって、「抗酸化栄養素」「解毒栄養素」をサプリメントで補給することは賢明な対処方法と言えます。

ストレスの多い現代人に大量に必要とされる「抗ストレス栄養素」

心の安定・生きがい・愛情関係における喜びは、人間の心にとって不可欠な健康条件です。人間の心の健康状態・精神状態は、身体の健康状態にストレートに影響を及ぼします。心の健康にとって、過剰なストレスは大敵となります。

物質文明が今ほど進んでいなかった昔の人々、なかでも都会から隔たった長寿村に住む人々は、生活のリズムがゆったりとし、現在のような多様なストレスに脅かされることはなかったと思われます。現代ほど、すべての人々にストレス対策・ストレス解消法が必要とされる時代はなかったでしょう。

ストレスに直面すると、体内ではストレスに対する緊急反応が引き起こされます。瞑想法や運動・音楽・散歩・ペットの存在は、人間の心のストレス解消に大きな役割を果たします。またビタミンCに代表される抗ストレス栄養素が、人間をストレスの害から防御することが知られています。

現代人は昔の人々と比べたとき、何十倍ものストレスを抱え、疲れ果てています。長期にわたるストレスは心身に重大な悪影響を及ぼし、体内では多量の栄養素が消耗されます。ストレス社会に生きる私たちには、当時の人々よりも、はるかに多くの「抗ストレス栄養素」が必要とされるのです。

サプリメントは“栄養療法”を効果的に進める手段となる

“栄養療法”はその名前が示すとおり、病気になった患者を治療する目的をもっています。その場合、単なる健康維持とは違った内容が要求されます。

栄養療法での治療は「食生活の根本的改善」に尽きますが、サプリメントはそれを効果的に進める働きをします。大きく欠乏した栄養素を早急に補うのに、サプリメントは威力を発揮します。しかも化学的医薬品と違って、もともと身体にとってのなじみのある物質が大半であるため、あまり副作用が生じません。栄養療法においてサプリメントは、抗酸化・解毒・抗ストレス・免疫力アップなど、さまざまな生理作用に強力に関係し、患者の全身の機能を高めることになります。

栄養素が、さまざまな現代病の予防と治療に著しい効果があることを示すデータは膨大な数にのぼります。そして現実に“栄養療法”に取り組む医師たちは、サプリメントを摂らせることによって目覚ましい治療実績を上げています。その事実こそが、何より栄養素の威力を示しています。

サプリメントに過大な期待をしてはならない

このようにサプリメントは、私たちの食生活にとってそれなりの役割を果たすことが分かります。しかしサプリメントに期待をかけ過ぎるなら、マイナスの結果を招くことになります。サプリメントだけで健康が手に入る、病気が治る、栄養素の摂取は完璧にできると思うのは大きな間違いです。

“食”が私たちの健康に果たす役割は全体の2割程度です。言い換えれば―「食だけを完璧にしても、人間は健康にはなれない」ということです。ホリスティック栄養学は、この2割の部分をより完璧にしようとするプロセスに他なりません。

サプリメントがその“食”の中で占める役割は、20%以下にすぎません。つまりサプリメントが健康全体の中で占める役割は―「わずか5%にも満たない」ということになります。

また次のような点も、しっかりと意識しておかなければなりません。それは―「どれほど多くの栄養素を摂取しても、腸内環境が悪ければ健康にはなれない」ということです。腸内細菌が健康に重大な影響を及ぼすことはすでに学びましたが、腸内環境が悪くて常に便秘をしているような人が、いくらサプリメントを用いても無駄になる可能性が大きいということです。口から入れる栄養素と腸内環境は、全く同等の重要性をもっています。食生活全体を正して腸内環境を改善しないかぎり、サプリメントの効果は期待できません。

サプリメントブームの現在では、サプリメントをめぐってさまざまな見解が入り乱れ、優劣が競われています。しかしホリスティック栄養学の立場からすると、そうした議論のほとんどが、サプリメントを誇大視するところで行われています。食の重要性を優先する見解は、ほとんど見あたりません。確かにサプリメントは、私たちの健康に素晴らしい結果をもたらす可能性をもっています。上手に用いれば、間違いなくよい影響をもたらしてくれることでしょう。

しかし繰り返しますが、サプリメントを過大視したり、サプリメントに期待をかけ過ぎてはなりません。サプリメントより先に“食事”に関心を向けるべきです。そして同時に“健康”は、食だけでなく「運動や休養」「心の安定・喜び」という条件を満たしたときに、初めて手に入るものであることを思い出さなければなりません。

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サプリメントの種類

これまで、「食事改善の補助手段」としてサプリメントについて述べてきました。ここではサプリメントの種類について見ることにします。

サプリメントの分類法はいろいろありますが、ホリスティック栄養学では、次のように大きく2種類に分類します。「食品系サプリメント」と「栄養素系サプリメント」です。

食品系サプリメント

「食品系サプリメント」とは、多種多様な栄養成分を豊富に含む補助食品のことです。一般に言う健康食品や特定保健用食品の一部が、これにあたります。多種類のファイトケミカルを含む野菜飲料なども、広い意味で食品系サプリメントとして見なすことができます。

食品系サプリメントは、次で述べるような特定の栄養素(ビタミン・ミネラルなど)だけを分離・抽出したり、化学的に合成したものではない―「食品の性質や形態を残したサプリメント」と言えます。食品に準じるもので、日常的に摂取しても問題のない補助食品のことです。クロレラ・ローヤルゼリー・青汁・ニンニクエキス・ウコン・アガリクス・プロポリス・酵素食品・乳酸菌などです。

多くの健康産業では、こうした食品系サプリメントを売り出す際に、「これ1つだけ摂れば病気が治る」「不調が癒される」といった形でPRしますが、そうした都合のいい食品(サプリメント)は、この世には存在しません。(※「食品系サプリメント」は品質や価格の差が大きいので、選択には注意を要します。ホリスティック栄養学で勧めるものは、あくまでも信頼の置ける高品質のものに限ります。)

栄養素系サプリメント

「栄養素系サプリメント」とは、食材・食品の中から特定の栄養素を分離・抽出したり、化学的に合成して、錠剤やカプセル(粉末)・液体・ソフトゲルなどの形態にしたものです。栄養素系サプリメントは、食品からある栄養素だけを抽出したものですので、単一の栄養素を高濃度に含んでいますが、自然の食品や食品系サプリメントほど多種類の栄養素をバランスよく含んではいません。

そのため栄養素系サプリメントを過大評価し、食事を軽視すると、栄養素の摂取に穴をあけることになります。栄養素系サプリメントには、ビタミン・ミネラルを中心に、アミノ酸やプロテイン・EPA・DHAなどがあります。

栄養素系サプリメントの摂取には、注意が必要です。適正量を超えて過剰に摂取することによる副作用(過剰症)や、単一の栄養素を大量に摂ることで他の栄養素とのチームワークを乱し、栄養素全体のバランスを崩すといった問題が生じます。したがって栄養素系サプリメントの効果を十分に引き出すためには、きわめて慎重な用い方をしなければなりません。現在は“サプリメントブーム”で手軽に入手できますが、それが必ずしもよい結果に結び付かないどころか、マイナスをもたらしている可能性もあります。

栄養素系サプリメントは、食品や食品系サプリメントに比べて“栄養素の活性”という点で多くの問題を抱えています。食品や食品系サプリメントには遠く及びません。

しかし栄養素系サプリメントには―「特定の医療効果を引き出しやすい」という利点があります。短期に治療効果を上げたいときには、大きな力を発揮します。その意味では栄養素系サプリメントは、医薬品に近いと言えます。しかも医薬品のように純粋な化学物質ではなく、身体になじみがある物質であるため「医薬品に比べて副作用は生じにくい」という利点もあります。

とはいっても、1度に大量に摂ったり、間違った摂り方をすれば、食品や食品系サプリメントと違って何らかの副作用が生じる可能性があります。最近では栄養素系サプリメントの多くがバイオ技術を用いて工場で大量生産されるため、栄養素の構造は自然のものと変わらなくても、現実には“人工的な単なる物質”と言った方がいいようなものになっています。そのため合成の栄養素系サプリメントを摂取すると、身体がそれを受けつけなかったり、異物として排除しようとする事実があることが報告されるようになっています。

栄養素系サプリメントには化学的医薬品ほどの副作用はないとしても、その摂取を無条件に勧めることができないのはこのためです。栄養学においてサプリメントが問題となるのは、ほとんどが栄養素系サプリメントです。

※さまざまなハーブ類は普通「食品系サプリメント」に含めますが、ハーブの中には医薬品並の強い薬効をもち、一定期間しか使えないものもありますので、それらは「栄養素系サプリメント」として扱います。

栄養素サプリメントと医薬品の違い

多くの“薬”は生体システムの働きを妨げて効果を現しますが、“栄養素”は生体システムの働きを高めて病気を治します。例えば風邪の場合、現代医学の対症療法では解熱剤・鎮痛剤が用いられますが、栄養療法では栄養素によって免疫力・抵抗力を高めることで治そうとします。

栄養素には、薬物のようなひどい副作用はなく、ずっと安全です。栄養療法では治療の初期には多めの栄養素を投与することがありますが、治療効果が現れると同時に、健康維持量にまでもっていきます。これは栄養療法によって、現実に健康レベルがアップするからです。したがって栄養療法には、現代医学のような“薬づけ”の心配はほとんどありません。

2種類のサプリメントの比較

自然に近くて多種類の栄養素を含むのは、自然の食品→食品系サプリメント→栄養素系サプリメント→医薬品という順番です。含まれる代謝関連栄養素・周辺栄養素は食品に近いほど多くなり、栄養素間のチームワークが強固になります。また食品に近づくほど、全体的に“体に優しい”と言えます。

医薬品のような一時的な効果という点からすると、順番は逆になります。医薬品に近いほど薬効は期待できますが、身体への負担が大きくなるので、使用期間や使用量を少なくした方がよいということになります。

サプリメント使用の大原則・・・食事がベースで、サプリメントはそのサポート

食事改善が“栄養療法”の中心

ホリスティック栄養学に基づく健康管理と病気の治療は、どこまでも食事改善が中心ですが、これまで述べてきたような理由から“サプリメント”を使用します。「食事が栄養摂取のベースで、サプリメントはそれをサポートするもの」というのがサプリメント使用上の大原則です。この点を、しっかり認識しておかなければなりません。

食事改善には、たいへんな時間とエネルギーが必要とされます。身についてしまった間違った食習慣を根本から改めるのですから、時には苦痛さえともないます。食事改善を実行するためには、人生に一大転機をもたらすほどの努力が現実に要求されるのです。

誰もが、今までのやり方を大きく変えたり、それにともなう苦痛は避けたいと思うものですが、勇気をもって進まないかぎり健康を手にすることはできません。安易にサプリメントだけに頼っていては、病気を治すことはできません。サプリメントに過大な期待をかけすぎてはならないのです。

栄養療法の基本は、あくまで「食事改善」であるということです。食事改善を徹底したうえで足りない栄養素をサプリメントで補ってこそ、ベストの結果がもたらされます。

栄養素系サプリメントは、食事にはかなわない

サプリメントが健康にプラスになると言っても、自然の食べ物のような威力を発揮することはできません。

例えば栄養療法では、抗ガン作用・抗酸化作用を期待して“ベータカロテン”の栄養素系サプリメントを使いますが、その効果は、新鮮な人参ジュースにはかないません。人参ジュースには、ベータカロテンだけでなく、何種類ものカロテノイド類・ファイトケミカル(植物栄養素)などが豊富に含まれています。これらが相乗効果をもたらすために“ゲルソン療法”などのガンの治療では、真っ先に人参ジュースが用いられてきたのです。サプリメントなら、人参ジュースに含まれる以上のベータカロテンを簡単に摂取できますが、効き目としては人参ジュースの方が優っています。

食物繊維の“ペクチン”は、コレステロールを下げるということで知られています。そのため多くの人々がサプリメントでペクチンを補給しています。ペクチンはリンゴに豊富に含まれ、1日2~3個のリンゴを食べるとコレステロール値が平均10%低下すると言われています。リンゴ2~3個の中に含まれるペクチンの量は2~3g程度です。ところがこのペクチンをサプリメントで補給し、コレステロール値を10%下げるには50gも摂らなければなりません。リンゴならわずか2~3gでよいのに対し、サプリメントでは50gも必要とされるのです。これはリンゴの中に含まれている他の栄養素との相乗効果があるからです。

最近の日本の研究では、1日1.5~2個のリンゴを3週間食べ続けることで、血液中の中性脂肪が平均21%減少したことが報告されています。さらに腸内の有益菌やビタミンCの血中濃度の大幅な増加が見られ、食物繊維と他の栄養素との相乗効果であろうと結論づけられています。(農業技術研究機構・果樹研究所発表より)一般に果物には果糖が多く含まれ“中性脂肪”の増加につながると考えられていますが、果物に含まれる栄養素のチームワークによれば、中性脂肪の減少だけでなく、健康の維持・増進にさまざまな効果がもたらされるということです。

また“ビタミンC”は、柑橘類やバラの実などに多く含まれていますが、そうした食品にはビタミンCだけでなく、ビタミンP(フラボノイド化合物)も一緒に含まれています。ビタミンPは体内でビタミンCの吸収を助け、互いに効率よく利用されます。

このように自然の食べ物には、それぞれの栄養素が見事なコンビネーションで備わっています。本当に不思議なことですが、全体として最大限にまで力を発揮できるような組み合わせになっているのです。せっかく食品の中に絶妙な配合で栄養素が含まれているのですから、それをそのまま体に取り入れるのがよいに決まっています。「正しい食事」とは、食品中の栄養素を、できるだけ無駄なく摂取することでもあるのです。

そのためには、食品を丸ごと食べることや、栄養素を逃さない調理の工夫が必要とされます。こうした点から、季節の食材をそっくり生かし、余分な手をかけずに素材の味を楽しむ伝統的な日本料理は、実に理にかなっています。

医師の“栄養療法”に対する理解の乏しさ

欧米に比べて日本では、「本格的な栄養療法」に取り組む医師はごくわずかです。欧米では通常医学の医師であっても、かなりの人たちが栄養療法を取り入れていますが、栄養学の遅れた日本では、その数も限られています。我が国で“栄養療法”が普及していないのは、栄養素の摂取についての学術的データ云々というより、治療に携わる医師自身が「栄養についての知識も関心も乏しい」というのが実状と思われます。

栄養療法に関心をもつ医師が現れることは歓迎すべきことですが、実際には栄養療法の本質を正しく理解していないことがよくあります。栄養療法に対する基本的な知識さえないところで、栄養素系サプリメントを使用するために、さまざまな問題を引き起こしています。

そうした医師たちの多くが、“栄養療法”をこれまでの“薬物療法”と同類のものと考え、栄養素と医薬品を同じように扱おうとするのです。また「食事改善」を前提としてサプリメントを使用するのが鉄則であるのに、それを無視して、栄養素系サプリメントだけで治療を進めようとします。栄養素が単一では効果が上げられないこと、栄養素はチームワークが重要である点(栄養療法の原則)が全く見落とされています。

こうした栄養素についての知識の乏しさが、かえって過剰投与の方向に向かわせることになり、栄養療法の利点を台なしにしてしまっています。

当ホリスティック健康学・栄養学研究所の「栄養指導理念」

当ホリスティック健康学・栄養学研究所では、栄養療法を希望するクライアント(助言や指導を希望する人)に、まず食事改善の重要性を話します。その努力を嫌がり「サプリメントだけを摂りたい」という相談には、応じられないことを伝えています。なぜなら食事改善に対する意欲の乏しい人は結局、病気を克服することはできないからです。

悪い食事をやめずに、サプリメントだけで手軽に健康を手に入れるという“虫のいい話”はありません。「まず食事改善に取り組み、そのうえでサプリメントを補う」というのが正しい在り方なのです。

効果的なサプリメントの使用方法

「栄養素系サプリメント」と「食品系サプリメント」の摂取比率の変化

本書で何度も述べてきましたが、ホリスティック栄養学においては、治療目的であれ健康維持目的であれ、健全な食事が常にベースとなります。必須栄養素の補給の大半は、日常の食事からなされなければなりません。それを補うのがサプリメントです。サプリメントは、どこまでも食事の補助手段にすぎません。

さて、ほとんどの人々にとってホリスティック栄養学との付き合いは、病気の治療から始まるのが普通です。治療の場合、栄養摂取の20%がサプリメントで占められことになりますが、治療の初期には、「栄養素系サプリメント」のウエイトが大きくなります。

やがて治療が効果を現すようになった段階で、栄養素系サプリメントのウエイトを減らし、食品系サプリメントのウエイトを増やしていきます。そして状況を見ながら、栄養素系サプリメントと食品系サプリメントの比率を等しいレベルにまでもっていきます。

病気が癒され、健康を取り戻したら、「食品系サプリメント」の比率を、栄養素系サプリメントよりも大きくしていきます。

「栄養素系サプリメント」と「食品系サプリメント」の摂取比率の変化

※これは徹底した食生活の改善が栄養摂取のメインで、サプリメントの摂取はその補助であることをイメージとして図式化したものです。多量栄養素を含む食事とサプリメントを定量化して比較することはできませんので、感覚的に表しています。

妊婦と子供に対するサプリメント使用について

妊婦と6歳以下の幼児については、サプリメント使用は特に慎重にしなければなりません。特別な治療の目的以外には、栄養素系サプリメントの使用はできるだけ控えるようにします。健康な妊婦や幼児であれば、「正しい食事」と適切な食品系サプリメントの摂取によって、必要な栄養素は十分確保することができます。デリケートな時期には、栄養素系サプリメントの使用については、医薬品と同じくらいの注意が必要です。

妊婦と子供に対するサプリメント使用

治療以外でのサプリメント使用の順番

治療目的以外では、サプリメント使用の順番は次のようにします。食品系サプリメント→マルチタイプの栄養素系サプリメント→単体タイプの栄養素系サプリメントです。

「できるだけ多種類の栄養素を摂る」「栄養素間のチームプレーを円滑にして、それぞれの栄養素を活性化させる」ことを考えたときは、より包括的レベル、より自然に近いレベルのものから優先的に選択します。栄養素系サプリメントを使用する場合は、マルチタイプを優先するように心がけ、その摂取量も抑えるようにします。単体のサプリメントは最後に付け加えるようにします。

栄養素系サプリメントの効果を引き出すのは“食事の質”―サプリメントの質を問うより、食事の質を問うべき

食品系サプリメントも栄養素系サプリメントも、その目的は食事の不完全な部分を補ったり、食事の質を向上させるところにあります。そうしたサプリメントとしての本来の目的から見れば、多種類の栄養素を含む「食品系サプリメント」が、栄養素系サプリメントより優れていることは言うまでもありません。食品系サプリメントは、概して自然に近い性質・形態を残しているからです。

それに対し「栄養素系サプリメント」は、錠剤やカプセル・ドリンクといった形式になっており、完全に自然の食べ物としての姿を失っています。素材が天然のものである、100%天然の食品から抽出しているといっても、自然から大きく離れてしまっていることは否定できません。

栄養素系サプリメントは、何より栄養素補給の簡便さを第1の目的としてつくられています。しかし、その“簡便さを求める”ということ自体が、実は栄養素補給という本来の目的にとって、マイナス要因を生み出すことになっているのです。簡便さを達成するために多種類の自然の栄養素を捨て去り、また取り出した栄養素も本来の活性度を大きく低下させることになっています。食や栄養素については、簡便さを求めることは必然的にマイナスとなるのです。

よく、「当社のサプリメントは100%天然素材だから栄養素の補給に優れている」といったPRがなされます。一般に天然ソースのサプリメントが特別優れているかのような宣伝がなされますが、それは単なる商売がらみの論理にすぎません。天然タイプは人工的に合成されたサプリメントに比べるなら少しはましかもしれませんが、「ホリスティック栄養学」という大きな視点から見れば、それも大同小異の議論にすぎません。

100%天然タイプのサプリメントは、人工的サプリメントに比べて多種類の栄養素を含むという点では確かに優れていますが、それでも食品や食品系サプリメントと比べるなら大きく劣っていることは事実なのです。

栄養素系サプリメントの使用についての重要な点は―「食事を正さなければ、どれほど優れたサプリメントを摂っても効果はない」ということです。食事を健全化し、栄養素の全体のレベルを上げたうえで栄養素系サプリメントを摂取するとき、サプリメントに含まれる栄養素が食事の栄養素と一緒になり、チームプレーを強化することができるのです。食事を通じて摂取される栄養素レベルが高いときには、サプリメントの栄養素は最大限にまで利用されることになります。「栄養素系サプリメント」は食事の補助のためにありますが、それは食事が万全であってこそ、本来の役割を果たすことができるのです。

食事の栄養素レベルが低いところで、どれほど優れたサプリメントを摂っても、大して効果を上げることはできません。天然100%の素材からつくられたサプリメントであっても、力を発揮することはできません。食事の栄養素レベルが高ければ、たとえ人工の栄養素系サプリメントでも、天然サプリメントより強力な働きをすることもできるのです。

大切なことは、「健全な食事」がベースになければ、栄養素サプリメントによる栄養素の補給は無駄になるか、わずかな効果しか得られないということです。問題はサプリメントの質にあるのではなく、食事の質にあるのです。「食事の内容こそが、サプリメントの働きを決める」ということなのです。

激しいサプリメント競争を展開している製薬会社や健康関連企業は、何とかサプリメントの差別化を図って、自社のサプリメントの売上を伸ばそうとします。製薬会社はユーザーの健康に関心があるのではなく、自分たちの利益にこそ関心があるのです。サプリメントの質をあれこれ言っても、ユーザーの健康を考えて、より優れたものをつくろうとしているわけではありません。多くの製薬会社や企業にとって、サプリメントは“金のなる木”なのです。

したがってメーカーの発表する情報に、神経質になる必要はありません。健全な食事を摂っているなら、どのようなサプリメントを用いても、それほど大差はないのです。繰り返しますが―「サプリメントが健康全体の中で果たす役割は、5%にも満たない」ことを忘れてはなりません。サプリメントブームの中で、企業論理にだまされないために、サプリメントの本質に対する広い視野に立った知識をもたなければなりません。「食事の質がよいか、悪いか」という点こそ重要な問題なのです。

サプリメントにかける費用を節約するには

栄養素系サプリメントには1日当たりの摂取量が明記されていますが、そうしたものにこだわる必要はありません。所要量を守らないと効き目がないと考える必要はありません。栄養素は常にトータル的・ホリスティック的にしか扱えないものなのです。大量に摂取しても、それが消化吸収されなければ意味がありませんし、吸収された後、体内で活性化されなければ無駄になってしまいます。腸内環境が悪い人が、いくら優れたサプリメントを摂っても何の意味もありません。こうしたことは、すべて食事全体の質が高いかどうかによって決まるものなのです。食事の質が高ければ、サプリメントは少量ですむようになります。

食事を健全化することによって、サプリメントの摂取量はボトルに表示されている数値の何分の1にも減らすことができるのです。しかも、それでいて十分に効果を上げられるようになるのです。栄養素系サプリメントにかけるお金を節約しようと思うなら、あれこれとサプリメントのパンフレットを物色するより、真っ先に食事改善に努めるべきなのです。

栄養素系サプリメントの摂取量について

サプリメント使用の危険性について触れる前に、栄養素の摂取基準について見ることにします。

いまだに一致しない「栄養素の摂取基準」

栄養素系サプリメントの使用にあたっては、たびたび摂取量が問題となります。実際によく「栄養素は、どのくらい摂ったらいいのでしょうか?」という質問が寄せられます。

栄養摂取基準を示すものとして日本では厚労省の定める栄養所要量、アメリカではRDA(食品医薬局)の勧告量などが知られています。(*最近になって日本では、「保健機能食品制度」のもとで「栄養機能食品(ビタミン・ミネラル)」の配合限度量が定められました。)

しかし栄養摂取の基準をめぐっては、現在でも専門家の間で激しい議論が続いています。さまざまな専門家や研究者が、自説を主張しているのが実状で、見解の一致からはほど遠い状態にあります。ここに現代栄養学の抱える最大の問題があります。

サプリメント先進国と言われているアメリカでは、一般的に摂取基準はかなり高く設定されています。特に“分子矯正医学”に携わる医師や研究者には、サプリメントによる高単位の栄養素摂取を積極的に進めて効果を上げようとする傾向が強く見られます。そして公的機関の摂取基準の低さをことあるごとに批判しています。

それに対してヨーロッパでは、概して低いラインに基準が設定されています。ヨーロッパの栄養療法医は、アメリカの栄養学者と比べて驚くほど低い摂取基準を示し、アメリカの高単位摂取に批判的です。大まかに言って、アメリカは栄養素サプリメント推進派、ヨーロッパは慎重派と言えます。

ここ20年ほど、サプリメント使用による栄養素の大量摂取は、アメリカ国内ばかりでなく日本などの先進諸国にも影響を及ぼし、“サプリメントブーム”を引き起こすようになっています。日本では最近になって、サプリメントによる栄養療法を行う医師が増加するようになっています。

これまで栄養素の大量摂取に関するマイナス情報が、生産者サイド(薬品会社)から示されることはありませんでした。日本では、「サプリメントは副作用の少ない安全なもの」との認識がいまだに大勢を占めています。しかし数年ほど前から、今まで安全とされてきたサプリメントによる栄養素の大量摂取が、さまざまな副作用を引き起こすことが明らかにされるようになってきました。アメリカの分子矯正医学による“メガ・ビタミン療法”の問題点や弊害が、指摘されるようになってきました。

栄養素系サプリメントの使用に反省の気運が起こりつつあるのは、1つの大きな変化と言えます。今後はそうした動きが、さらに加速していくものと思われます。おそらく栄養素系サプリメントは、ハーブや食品系サプリメントに徐々にシェアを奪われるようになっていくでしょう。

ホリスティック栄養学は、サプリメントによる単一の栄養素の大量摂取(メガ・ビタミン療法)には反対です。ホリスティック栄養学は、サプリメントよりも食事を重視し、むしろサプリメントの比率を下げることを1つの目標にしています。その意味でメガ・ビタミン療法とは、方向性を全く逆にしています。

ホリスティック栄養学では、「栄養素の摂取基準量」をどのように考えるか

栄養素の必要量は、人によって大きな差があります。体格・体質・運動量・生活環境によって変化します。さらには同じ人間であっても体調によって変化します。栄養素の必要量はあまりにも個人差が大きく、共通の摂取基準を定めることは、ほとんど意味をもちません。

現代医学的な発想からすれば、栄養摂取量の基準を決めることは、ぜひとも必要です。基準が示されれば、過剰と不足が明瞭に示されるようになり、医療に一定の方向性が確立されることになるからです。しかし食や栄養素をそうした分析的な方法論で扱うと、現実と大きく掛け離れたマイナスの結果をもたらすようになります。「摂取基準に届かなければ、サプリメントで補えばいい」という短絡的な数字合わせをするところからは、よい結果がでることはありません。

栄養素の必要量は個人個人であまりにも差が大きいことを考えると、無理やり摂取基準をもうけることより、「正しい食事をしているかどうか?」を問題にすべきなのです。可能なかぎりの質の高い食事をしているか、食事によって必要な栄養素の大半を摂取しているかどうかを問題視すべきなのです。

さらに次のようなことを考えると、摂取基準を定めることの無意味さがよく分かります。すべての栄養素は、単独で働くことはできないということです。1つの栄養素は、必ず他の多くの栄養素との間に複雑に絡み合った関係をつくり、初めて本来の働きをすることができるようになります。どのような栄養素も、チームの一員として貢献できるかどうかによって、その働きが決定されるのです。こうしたチームワークのうえで成り立っている以上、各栄養素ごとの摂取量を決めても全く意味がありません。

栄養素と食の扱いは“ホリスティックに”

分析的方法論に基づいて栄養素の摂取基準を設定することは、時に大きな的外れを犯すことになります。身体や環境のさまざまな要因、また他の栄養素とのトータル的関係によって必要な摂取量が決まる以上、あらかじめ定められた基準に合わせて栄養素の摂取量を考えることは、本末転倒しています。それは反ホリスティック的で、自然から大きく逸脱した在り方です。人工的に決められた基準に無理やり合わせるといった方法では、努力の大半は無駄になってしまうことでしょう。

「正しい伝統食」を中心とした食事を実践していれば、サプリメントに頼る栄養素の量を大幅に減らすことができます。しかも摂取された栄養素を最大限にまで活用することができるようになります。質の高い食事は、全体としての栄養素レベルがアップするため、栄養素間のチームワークを強化することができるようになるのです。

反対に食事の質が悪く、栄養素の全体的レベルが低ければ、サプリメントでどれだけ栄養素を補給しても、チームワークの強化には結び付きません。せっかくのサプリメントが活用されずに終わってしまいます。質の高い食事をしていれば、必然的にサプリメントに頼る割合も少なくてすむようになるのです。

栄養素を科学的・分析的に見て、摂取基準をもうけることは現実的ではありません。栄養素の摂取基準にこだわり過ぎると、大きな落とし穴にはまることになります。ホリスティック栄養学における「サプリメント使用」は、食の栄養摂取を、さらに補強するためにあります。治療の場合は、例外的にサプリメントを集中的に用いることもありますが、それはあくまでも一時的な対処法なのです。

ホリスティック栄養学では、“食”を個々の栄養素に分けて考えません。どこまでも――「食全体を1つの単位として見ることが大切である」とします。そして「食事の質を上げるための食事改善こそが、トータル的な対処法である」と考えるのです。

一方、生化学栄養学や現代栄養学は、分析的科学主義に立脚することによって、自らの首を絞めるようになっています。食事を個々の栄養素の観点から眺め、人工的に決めた摂取基準に合わせるために、それぞれの栄養素を補います。その結果、往々にして大局を見失うことになっています。

ホリスティック栄養学は、生化学栄養学・現代栄養学の科学性を尊重し、その成果を取り入れますが、それに縛られることなく、あくまでもトータル的・ホリスティック的視点を中心として判断し、対処方法を考えるのです。ホリスティック栄養学は――「食生活全体」をホリスティックに判断し、ホリスティックに対処する栄養学なのです。常に「栄養素全体のレベル」に注目し、食事改善を中心としてその全体のレベルを引き上げようとするものなのです。

とりあえず“身体の声”を手がかりにしましょう

栄養素の摂取基準や許容範囲は人によって大きな開きがあり、一様の基準を示すことができないとするなら、私たちは一体、何を手がかりにしたらいいのでしょうか。それについて、あまり心配する必要はありません。身体には、必要なもの、有害なものを知らせる優れたセンサーが備わっているからです。

もし一定期間(*2週間~1ヵ月)、ある栄養素系サプリメントを使用して不快感や変調などの異常が生じたときは、身体が赤信号を発していると判断してストップすればいいのです。こうした体の声に耳を傾けているかぎり、深刻な副作用で苦しむような結果は避けられるでしょう。この微妙な感覚を正しくキャッチできる人は、サプリメント摂取によって害を引き起こす段階にまで至ることはありません。

ただし、これまであまりにも間違った食生活を続けてきた人々は、正常な味覚が失われているため、この方法は適用できないかもしれません。さらに間違った知識が先入観となって思考を縛っている場合も、身体の声を素直に聞くことはできないでしょう。

そもそも本書で示したような「食事改善」を確実に実行している人が、サプリメントに必要以上に傾くことはありません。問題の多くは、食事改善をしないうえに栄養療法に対する正しい知識のない人に起きるのです。

栄養素系サプリメントの害と危険性

通常の食品を摂り過ぎても副作用が生じるというようなことはありません。(※食べ過ぎの弊害は別として……)また、まともな食品系サプリメントであるかぎり、それを摂り過ぎたからといって深刻な副作用が生じることもめったにありません。サプリメントが害を引き起こすのは、圧倒的に栄養素系サプリメントの場合です。

ここでは、「栄養素系サプリメント」の摂取にともなう害や問題点を取り上げることにします。

栄養素といっても過剰摂取すれば“毒”となる

本来ビタミンやミネラルは身体に必要なものであり安全なものです。しかし、それも過剰に摂取すれば、副作用を引き起こします。およそこの世の中に、むやみに摂り過ぎて害にならないものなど1つもありません。化学薬品には多かれ少なかれ副作用があることは誰でも知っていますが、それと同じように栄養素も摂り過ぎれば害をもたらすことになるのです。

もっとも栄養素系サプリメントが害になるといっても、その害毒性は薬物と比べれば、ずっと少ないと言えます。

栄養素を医薬品と同一視する間違い

栄養素を医薬品と同じようなものと考えると、サプリメントを間違って使用することになります。医薬品のように「単一の栄養素を摂るだけで効き目が現れる」と考える人々が多くいます。

何度も述べてきましたが、栄養素は常に他の栄養素とのチームワークの中で、初めて力を発揮するものなのです。単一の栄養素系サプリメントを大量に摂ることによって、チームワーク全体を乱すことになり、かえって弊害を引き起こすことにもなりかねません。また「栄養素は安全なもの、副作用はないもの」と安全性を過信するところから、単一のサプリメントを過剰摂取することもあります。しかし、それは間違っています。

ホリスティック栄養学は、ライナス・ポーリングによって始められた“メガ・ビタミン療法”の考え方には賛同しません。メガ・ビタミン療法が、大量の栄養素をサプリメントで摂取するのに対して、ホリスティック栄養学は、サプリメントの摂取はできるだけ低く抑えようとします。また単一の栄養素に集中する摂取方法にも反対します。サプリメントによる単一の栄養素の大量摂取では、栄養素本来の効果が得られないどころか、深刻な弊害や副作用がもたらされる危険性があるからです。

メガ・ビタミン療法はきわめて不自然な治療法であり、ホリスティック栄養学とは根本的に異なります。

栄養素系サプリメントによる単一栄養素の大量摂取の害

ビタミンが人体にとって必須の栄養素であることは、誰もが知っています。代謝を促進し、免疫作用を高め、有害なフリーラジカルの攻撃をガードするなど、さまざまな働きによって私たちの健康を守っています。特にビタミンCは代表的なビタミンで、その働きは科学的に明らかになっているだけで、40を越えると言われています。このような生命維持に欠かせないビタミンも、使い方を間違えると問題を引き起こすことになります。

“メガ・ビタミン療法”は、単一の栄養素を大量に用いる代表的な治療法です。一般的に生化学栄養学では、1日のビタミンCの必要量(保健量)をおよそ2~3gとしていますが、メガ・ビタミン療法では10g以上もの投与を行います。こうした高単位のビタミンCの摂取が大きな治療効果をもたらすと考えるのです。しかも、その副作用は“軟便”になる程度であると言います。

これまで「ビタミンC」は、水溶性のため過剰に摂取してもすぐに体外に排泄されるから害はないと考えられてきました。しかし最近になって、その常識が間違いであったことが明らかにされつつあります。(※“軟便”の状態は適正量を示すものではなく、大量のビタミンCを体が処理できずに「悲鳴を上げている」ととらえるべきです。)

メガ・ビタミン療法では、ビタミンCには動脈硬化や心筋梗塞を予防する効果があると言いますが、大量投与されたビタミンCが、マイナスの働きをする場合があることが指摘されるようになっています。ビタミンCは濃度が高くなると、遺伝子を傷つける危険性があるというのです。また“頚動脈肥厚”という副作用を招く危険性があることが報じられています。

ビタミンCは風邪の予防や治療に効果があると言われてきましたが、それについても疑問がもたれています。栄養療法に携わる多くの医師が、ビタミンCの大量投与は期待していたような免疫システムの強化に結び付かないと述べています。またビタミンCを生産しているロシュ社のアメリカ子会社の研究者が、ここ20年間の研究結果として、サプリメントによるビタミンCの大量摂取には風邪の予防効果がないことを、しぶしぶ認めたとも報じられています。(*これは「ビタミンCを単独で大量に摂取しても風邪には効果がない」ということであって、他の栄養素と組み合わせた場合には効果が期待できます。)

妊婦がビタミンCを大量摂取したために、体内で防御システムが働き、過剰になったビタミンCを体外に排泄するようになりました。これを胎児の身体が学習したために、赤ちゃんは生まれてすぐに“壊血病”になってしまいました。生まれた後も母体内で学んだとおりに、ビタミンCを体外へ排泄するようになってしまったのです。人体に不可欠な必須栄養素も、サプリメントによる不自然な大量摂取では弊害を引き起こすこともあるのです。

脂溶性ビタミンの過剰摂取の問題については、従来から言われてきました。妊娠初期に大量の「ビタミンA」を摂ると流産などの危険性があることは、よく知られています。また「ビタミンD」はカルシウムを骨や歯に蓄えるのに必要なビタミンですが、大量に摂取するとかえって骨からカルシウムを溶かし出すようになります。さらに動脈硬化や高血圧を引き起こすことも明らかにされています。

「ビタミンE」は、ビタミンCと並んで人気のある栄養素ですが、サプリメントによる摂取では、それほど多くの効果は期待できないことが指摘されるようになっています。栄養素は、他の栄養素とのチームプレーによって初めて効果を発揮するものですが、ビタミンEもその例外ではなく、単独では十分な働きをすることができません。

ビタミンとは異なり、現代人のミネラル不足は深刻で、知らず知らずのうちに欠乏症を引き起こしていると言われます。しかしミネラルの摂取は、原則的には食事を通じて行うべきです。許容量がビタミンと比べてかなり低いため、安易にサプリメントに頼ると、すぐに過剰摂取になってしまいます。

さらにミネラルは、他のミネラルとの間に強い拮抗関係があるため、特定のミネラルの過剰摂取は、たちまちミネラル間のアンバランスを引き起こすことになります。ミネラルの補給は、食品系サプリメントをメインにします。もし栄養素系サプリメントで摂る場合には、できるだけ“マルチビタミン・ミネラル”を優先するようにします。

「鉄」の過剰摂取は、時に副作用を起こします。鉄のサプリメントは貧血の治療に処方されることがありますが、体内に蓄積されるため、鉄不足がはっきりしていないかぎりサプリメントでは摂らないようにします。(※ここでは栄養素系サプリメントによるビタミン・ミネラルの過剰摂取の弊害の一部を取り上げました。詳しくは別の機会に述べることにします。)

※ハーブ類のサプリメントについても注意が必要です。ハーブは体質・症状に合えば素晴らしい薬効を現すことがある一方、医薬品ほどではありませんが、副作用の心配もあります。

※アレルギーのある人の場合には、食品系サプリメント、栄養素系サプリメントにかかわらず、アレルギー反応が生じることがあります。また純粋なビタミンCはアレルギーを生じないのに、製造過程で使われている結合剤・コーティング剤などの成分がアレルギーを引き起こすことがあります。

※医薬品を服用している場合には、注意が必要です。栄養素系サプリメントやハーブ類の中には、医薬品の効果を増強させたり、減弱させるものがあります。

サプリメントに関する知識・情報は膨大なもので、限られたスペースでは、とてもすべてを述べることはできません。ここでは、ホリスティック栄養学におけるサプリメントについての基本的なスタンス・考え方を示すにとどめました。いずれ機会を見て、サプリメントについての詳細を取り上げることにします。


 
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