腸内細菌の重要性

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最近になって「腸内細菌」に対する認識が広まるようになってきました。 腸内細菌には、体によい働きをする「善玉菌」と体に悪い働きをする「悪玉菌」があり、悪玉菌が多いと、大腸ガンをはじめとするさまざまな病気が引き起こされると言われるようになってきました。そして善玉菌の働きを活発にするためのヨーグルトやオリゴ糖などの売上が急激な伸びを示し、巨大な市場になっています。

確かに腸内細菌は私たち人間にとって、とても重要な働きをしています。「腸内細菌の状態が健康を左右する」と言っても過言でないことが、最新の研究で明らかにされています。腸内細菌についての研究の歴史は、それほど長いわけではありません。しかし、その短い期間に急速に進展しています。特にここ数年の間に、数多くの重大な研究成果が報告されています。従来からの細菌培養法に新たに「分子生物学的手法」が導入され、研究は一気に進み、腸内細菌の全容が解明されるようになりました。今や腸内細菌についての研究は、現代科学の最先端に立っています。

ここでは、その最新の情報について述べていきます。

最も身近なエコロジー的共存関係

人間の腸の中には、およそ500種類以上、100兆個以上もの細菌が住んでいます。100兆個といえば、私たちの身体を形成する細胞の数よりも多く、その細菌を集めれば肝臓と同じくらいの重さになると言われます。腸内細菌の多くは、小腸の終わりから大腸全体にわたって住みつき、私たちの健康状態を決定する重要な働きをしています。

腸内細菌の住処である大腸は、かつては最後の消化器官で、水分を吸収して便をつくるところ、老廃物の蓄積場所といった程度の認識しかなされていませんでした。しかし腸内細菌の働きの重要性が明らかになるにつれ、大腸に対する見方も根本的に変わることになりました。

最近では“エコロジー”が人々の関心を集め、私たちを取り巻く環境の悪化や自然崩壊が、人類に多くの悪影響を与えていることが知られるようになってきました。ところが考えてみれば、私たちにとって最も身近で最大のエコロジー的世界とは、腸内細菌の世界であると言えます。人間と腸内細菌は、持ちつ持たれつの関係の中で共存しているのです。

「100兆個以上もの生き物が住みついて生命活動を行い、私たちの健康に重大な影響を及ぼしている」「人間は腸内細菌からさまざまな恩恵を受けて生命を保ち、腸内細菌は人間によって活動する場所を与えられ存在している」という事実は、人間の体に備わっている免疫システムの働きを考えると、とても神秘的で不思議なことなのです。

人間の免疫システムは、外部から侵入してくる細菌を強力に排除して、生命に危害が及ばないようにしています。免疫システムは、人間を病気に至らせる多くの病原菌や有害物を排除して人体を守ろうとします。腸内細菌は免疫の対象となる病原菌と同じように“細菌”なのですが、腸内細菌は免疫システムによって排除されません。この不思議な事実は――「腸内細菌が人体にとって有益な働きをするために、免疫システムが味方として認め、存在するのを許している」ということを意味しています。

腸内細菌がいなければ、私たち人間は細菌の海の中で生きていくことはできません。細菌は必要性があって腸内に住みつき、それによって私たちは自然界の中で生活することができるようになっているのです。

善玉菌と悪玉菌

腸内細菌は、私たちが食べたものをエサにして生命を維持し、さまざまな物質をつくっています。そうした細菌の中には、人間に有益な働きをする「有益菌」もいれば、逆に有害な働きをする「有害菌」もいます。これが一般に言われている「善玉菌」「悪玉菌」です。その他に「日和見菌」と呼ばれる腸内細菌がいます。日和見菌とは、腸内の状態によって有害な働きをしたり、無害であったり、有益な働きをする菌のことです。腸内細菌は大きくこの3種類に分けられます。有益菌が多ければ健康が保たれ、有害菌が増えると病気にかかりやすくなります。

有益菌は食物繊維やデンプンをエサにして活動し、腸内で「発酵」を進め、人体にさまざまなプラスの影響をもたらします。有益菌の代表的なものは「ビフィズス菌」です。ビフィズス菌は「乳酸菌」の1種で、発酵により乳酸などの「有機酸」を生成し、腸内の酸性度を高めて有害菌の繁殖を抑えます。有益菌が活発に活動していれば消化・吸収が促され、免疫力は高まり、健康を保つことができます。(※乳酸菌は乳酸発酵に関与する細菌の総称で、現在までに約350種類が確認されています。ビフィズス菌はそのうちの1種で、現在までに約35種類が確認されています。ビフィズス菌は人間の腸内に住みつくことのできる細菌で、腸内細菌の中で最も重要な役割を担っています。)

有害菌はタンパク質を好み、腸内で「腐敗」を起こし、健康にマイナスをもたらします。有害菌の代表的なものは「ウエルシュ菌」です。その他にも「大腸菌」や「ブドウ球菌」などが知られています。有害菌はタンパク質や脂肪を分解して「有害物質・発ガン物質」を生成し、腸内環境を悪化させます。それによって老化が早まり、病気にかかりやすくなるのです。(※悪玉菌として名高い「ウエルシュ菌」は、腸内に常在する有害菌「クロストリジウム」の1種です。)

このように聞くと大半の人々は、何とか憎い悪玉菌を体内から追い出して、善玉菌だけにしたいと思うかもしれません。そして善玉菌を増やすために、ヨーグルトをせっせと食べるかもしれません。こうした考えが世の中に常識として定着し、安易なヨーグルトブームを生み出すことになっています。しかし、その考え方は間違っています。

腸内細菌のバランス

一般的に腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」に区別され、悪玉菌はもっぱら不用な厄介者のように思われていますが、そうではありません。もし悪玉菌と呼ばれている菌が本当に人体に害をもたらすだけのものであるなら、免疫システムの働きによって、とっくに排除されているはずです。一生懸命にヨーグルトを食べて腸内から追い出そうとしなくても、とっくにいなくなっていることでしょう。ここに大きな生命活動の神秘があるのです。

免疫がいわゆる「悪玉菌」を排除しないでいるということは、実は悪玉菌は人体にとって必要な存在であるからです。人体に有益な働きをするために、あえて生かしているのです。これからは従来のように腸内細菌を善玉・悪玉に分けるのではなく、ともに必要なものとして、ひとまとめに考えなければなりません。100兆個もの細菌を、単純に善玉・悪玉と区別することはできません。どの細菌も必要性があって存在していると、とらえるベきなのです。

最新の研究は、まさにそうしたことをも明らかにしつつあります。例えば普通“汚くて恐い”と思われている「大腸菌」であっても、状況によっては他の病原菌からの感染を防いでくれます。その反対に、有益菌の代表である「ビフィズス菌」が、発ガン物質をつくり出すこともあるのです。「同じ細菌が環境によって、プラスにもマイナスにもなる働きをしている」ということです。環境によって有害・無害が左右される以上、単に1種類の細菌だけを取り上げて善玉・悪玉と論じることは間違いなのです。

ここでもう1つ重要な点は、「有益菌と有害菌と日和見菌は、先天的に一定のバランス比率をもって体内に存在している」ということです。私たち1人1人の顔つきや指紋が異なるように、人によって腸内細菌の状態は違っており、その基本的なバランスは生まれつき決定していると言われるようになってきました。“生まれつき”が遺伝的なものなのか、あるいは出生時における母親からの細菌情報の伝達なのか、研究者の間で意見が分かれていますが、1人1人にふさわしい腸内細菌の個性的比率は、おおよそ決まっているのではないかと考えられています。そうした基本的なバランスのうえに食事やストレスなどの後天的な要因が影響を及ぼし、現実の腸内細菌の状態が決定しているということなのです。

もともとその人間に合った腸内細菌のバランスが保たれていればよいのですが、それが後天的な要因によって崩れると、さまざまな問題が生じるようになります。バランスがとれていたときには何の問題も起こさなかった「有害菌」や「日和見菌」が、悪い働きをするようになるのです。

腸内細菌のアンバランスを正すには

腸内環境はいろいろな原因で変化しますが、なかでも食生活は大きな影響を及ぼします。欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は悪化します。食物繊維が不足した「不健全な食事」では、腸内細菌のよい働きを引き出すことはできません。高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、腸内環境にとって最大の敵と言えます。

また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題です。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。抗生物質は病原菌をやっつけるだけでなく、よい腸内細菌まで殺し、腸内フローラを悪化させます。家畜に投与された抗生物質が肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を弱らせるようなこともあります。

こうした食事やライフスタイルの間違いが、腸内細菌のバランスを崩し、人体にマイナスの働きを引き出すことになってしまいます。人間と共存・共生している細菌のトータル的な働きを、よい方向に向けられるかどうかは、人間サイドの姿勢によって決まるのです。

特に食事のよし悪しは、腸の健康にとって決定的ともいえる重要性をもっています。高タンパク・高脂肪の肉や牛乳などを減らし、野菜料理に漬物や納豆などの発酵食品を加えた伝統的な日本食にすれば、“腸内フローラ”の崩れたバランスは回復し、健康を取り戻すことができるようになります。「食物繊維」の豊富な食事によって、腸内細菌をよい状態に維持することができるのです。欧米型の食事をやめて、野菜や発酵食品を中心とした伝統的な日本食にすることが、腸内細菌をよい状態に保つ強力な方法となります。腸の健康のためには、真っ先に「食事改善」に取り組まなければなりません。

最近では、ヨーグルトを食べて腸内細菌の状態をよくしようという「プロバイオティクス」の動きが活発になってきました。またオリゴ糖などの「善玉菌のエサ(プレバイオティクス)」を取り入れて腸内細菌の働きを活発化させることも行われています。こうした試みは、人によっては腸内環境の改善に有効ですが、次の点をしっかりと押さえておかなければなりません。それはプロバイオティクスは、食事改善を実行してこそ効果を発揮することができるということです。

言い換えれば――「食物繊維や発酵食品が豊富な日本食を常食すれば、あえてヨーグルトやオリゴ糖などを摂らなくても理想的な腸内環境を維持できる」ということです。ヨーグルトによってプロバイオティクスの効果を期待する場合には通常、毎日200g以上の摂取が勧められます。しかし食事改善さえしっかりしていれば、そうした不自然なヨーグルト摂取は必要ありません。ヨーグルトによるプロバイオティクスは、食事改善を徹底しても、なお腸内環境が整えられないときの一手段として考えるべきでしょう。

※「プロバイオティクス」とは、人体に有益な働きをする生きた微生物のことです。「プレバイオティクス」とは、有益菌を増殖・活発化させることで健康にプラスをもたらす食品群のことです。発酵食品の納豆や漬物などは、優れた「プロバイオティクス」であり「プレバイオティクス」と言えます。

ヨーグルトによるプロバイオティクスの摂取については、脂肪の多さが問題となります。低脂肪のヨーグルトや、脂肪を抜いた自家製のヨーグルトが勧められます。豆乳からつくるヨーグルトなら、なおよいでしょう。最近では、「植物性乳酸菌」を用いて乳酸発酵させた野菜飲料なども出回るようになっています。

“便”の状態による健康チェック

腸内細菌の状態がどのようになっているかは、排泄される“便”によって簡単に知ることができます。腸内細菌のバランスがとれ、有益菌が支配する「酸性」の腸でつくられた便は――黄色っぽい茶色で、軟らかくて量があり、ほとんど臭いません。前日の食べ物が、翌日にはスッキリと排泄されています。こうした快便が得られているなら、腸内細菌のバランスは整っています。細菌が全体として、その人の健康に貢献していることが分かります。普通、健康な人の便の量は1日にバナナ2~3本くらいで、水に浮きます。

反対に有害菌が繁殖する「アルカリ性」の腸でつくられた便は――黒っぽい茶色で、硬くて量が少なく、強い悪臭がします。こうした便は腸内細菌のバランスが崩れ、細菌の悪い働きが出ていることを示しています。腐敗が進んでいる腸内に長くとどまっていたことが分かります。(※ウサギの糞のようなコロコロ便や、太くても硬い便は、2~3日前の食べ物が排泄されている可能性があります。また下痢便も腸内環境の悪化を示しています。)

健康な人の便は、約80%が水分です。そして固形分の3分の1~半分を腸内細菌が占めています。残りは食べ物のカスと腸壁からはがれ落ちた粘膜などです。1gの便の中には、約1兆個の細菌がいると言われています。便の半分ほどが腸内細菌であるというのは驚きですが、それだけに“便”を観察すれば、腸内細菌の状態がよく分かるのです。

腸内環境が整っていなければ、健康を維持することはできません。病気を克服することもできません。私達の健康は――「腸の健康から始まる」のです。どれほど素晴らしい栄養価のある食品を摂っても、腸が健康でないかぎり、すべてが無駄になってしまうのです。

便は、毎日とどけられる健康のバロメーターです。“便”の状態をよく観察し、健康状態をチェックすることを習慣化したいものです。

※最も理想的な便は、生後数日から離乳期までの赤ちゃんの便です。黄色くて酸っぱいような匂いがしますが、それは、この時期の赤ちゃんの腸内は、90%以上「ビフィズス菌」によって占められているからです。ビフィズス菌のつくる発酵物質によって腸内は強い酸性に保たれ、病原菌が繁殖できないようになっています。

健康を大きく左右する「乳酸菌」の働き

ビフィズス菌をはじめとする乳酸菌は、食物繊維やデンプンを分解・発酵させて、さまざまな発酵物質を生成します。大腸はちょうど発酵槽のようなもので、その中でビフィズス菌・乳酸菌は、人体に有益な多くの発酵物質をつくり出しています。乳酸・酢酸・酪酸・プロピオン酸などの「有機酸」です。そうした細菌が生み出した発酵物質は、腸内環境を正常に保ち、さまざまな生理作用を活性化します。そして免疫力・抵抗力を高めて病気を防ぎます。また菌体成分そのものの有効性も報告されています。

ここでは、最新の研究によって明らかにされつつある「乳酸菌」の働きを挙げておきます。

(1)腸内環境を整えて便通を正常化し、有害菌の繁殖を防ぐ

ビフィズス菌・乳酸菌がつくり出す有機酸は、腸内を弱酸性に保ち、有害菌の活動・繁殖を抑えます。それによって有害菌が産生する腐敗産物(アンモニア・アミン・硫化水素・インドール・フェノールなどの毒素)の生成が防がれ、便やオナラの悪臭がなくなります。病原菌の侵入も阻止され、たとえ病原菌が腸内に入っても働くことができず、感染が防がれます。(※病原菌は普通“酸”に弱いのです。)

また有機酸の刺激によって腸の働きが活発になり、自然な便通が得られます。便秘や下痢が解消されて栄養の吸収がよくなり、有毒物質・発ガン物質の排泄が促進されます。

(2)免疫力を高める

ビフィズス菌・乳酸菌の菌体成分や菌がつくり出す多くの物質には、免疫力を強くする働きがあると言われます。また有機酸の一部が腸粘膜の栄養・エネルギー源となり、免疫の最前線である「腸管免疫」を活性化させ、それによって身体全体の免疫系も刺激されます。

免疫力のアップについては、ビフィズス菌・乳酸菌のトータル的な働きによるものと考えられます。免疫力が高まれば、ガンやアレルギー・感染症など、さまざまな病気にかかりにくくなります。

(3)ガンを予防する

ビフィズス菌・乳酸菌が優勢なら、有害菌の増殖が抑えられ、有害菌がつくり出す有毒物質・発ガン物質が減少して、発ガンのリスクが低減します。有機酸の活性作用によって免疫の働きが高まり、ガンの発生・進行が抑制されます。

(4)アレルギー反応を抑制する

ビフィズス菌・乳酸菌の働きとアレルギーには、密接な関係があります。(※それについては、次で述べています。)

(5)ビタミンやアミノ酸を合成したり、エネルギーをつくり出す

ビフィズス菌・乳酸菌は、ビタミンやアミノ酸などを合成しています。「ビタミン」については、B群のかなりの種類・ビタミンKなどがつくられます。またビフィズス菌・乳酸菌は、消化酵素やはがれ落ちた腸壁細胞のタンパク質をリサイクルして「アミノ酸」を合成しています。腸内細菌によってつくられる栄養素の量がどのくらいかは明らかではありませんが、体内でつくられた栄養素は吸収されやすいという利点があります。栄養素だけでなく「酵素」も腸内細菌によってつくられます。

さらに有機酸やその他の栄養素の一部が腸から吸収され、「エネルギー」になっています。人間の総エネルギー獲得量の10%は、腸内細菌の働きによって得られるとする説もあるほどです。

(6)ミネラルの吸収を促進させる

カルシウムやマグネシウム・亜鉛などのミネラルは、吸収されにくい性質がありますが、有機酸によって腸内の酸性度が増すと吸収率が高まります。特にカルシウムは乳酸と結合して乳酸カルシウムとなり、吸収率がアップします。ミネラルの吸収は、小腸の終わりから大腸にかけて促進されると言われています。

他にビフィズス菌・乳酸菌の働きとしては――「コレステロールの吸収・合成を抑える」「過酸化脂質を分解する」「血圧を低下させる」などが挙げられます。老人性痴呆症や動脈硬化との関連も指摘されています。

このように私たちの腸内には、100兆個にも及ぶ生命体が存在し、健康を大きく左右する驚異的な働きをしているのです。

アレルギーと腸内細菌の関係

現代人の半数近くがもっているアレルギーは、“免疫異常”によって引き起こされる病気ですが、最近では腸内細菌が、免疫の働きに重大な影響を及ぼしていることが分かってきました。

食べた物が完全に消化されて体内に取り入れられるなら、「食物アレルギー」は生じません。しかし、たとえ未消化の食べ物が入ったとしても、腸に備わった「腸管免疫」が健全に働くなら、アレルギー反応が引き起こされるようなことはありません。腸管免疫は、消化のプロセスで残されたアレルゲンを不活性化させ、アレルギー反応を起こさせないようにするのです。食物アレルギーが生じるのは――「腸管免疫システムが上手に働いていない」ということです。

腸内細菌は、この腸管免疫と大きなかかわりをもっています。有益菌が優勢の腸内では、アレルギーの発症が抑えられることが分かってきました。腸内細菌がアンバランスな人は、腸管免疫の働きが弱くなり、食物アレルギーが起きることになるのです。実際にアトピーやアレルギーで苦しんでいる人たちの大半に、ほぼ例外なく腸内細菌のアンバランスが見られます。いつも頑固な便秘に悩まされていたり、ひんぱんに腹痛や下痢を起こしたり、あるいは臭いオナラが止まらないといった「腸内環境の悪化」を示す症状が出ています。

すでに述べましたが、有益菌がつくり出す物質や菌体成分が腸管免疫を通じて全身の免疫システムを刺激し、アレルギー反応を抑制します。また腸粘膜の免疫細胞でつくられ、粘膜を保護する働きをもつ「IgA抗体」は、アレルゲン物質の侵入を防ぎ、有害菌や病原菌・ウイルスの毒素を中和する作用がありますが、有益菌の働きによって腸管免疫システムが活性化されることで産生が促進されると言われています。

さらに有益菌は、細胞増殖促進物質である「ポリアミン」をつくり出します。これが小腸および大腸の粘膜細胞を強化します。腸のバリアーが強くなれば、アレルゲン物質の通過を防ぐことができるようになります。食物アレルギーは「バリアー機能の低下」によって引き起こされますが、腸内細菌のバランスが整えば、アレルギーを抑えることができるようになります。

このように腸内フローラのよし悪しは、免疫の働きと密接に関係しています。現在、増え続けているアトピーやアレルギーは、「腸内環境の悪化・腸内細菌のアンバランス」がストレートに反映していると思われます。

★胃と大腸に挟まれ消化器官の中で最も奥にある「小腸」は、内視鏡が届かなかったために、これまでその働きがよく分かっていませんでした。しかし、ここ1~2年の間に内視鏡の技術が飛躍的に向上し、小腸の内部を見ることができるようになってきました。

その結果、小腸は単に消化吸収を行う臓器ではなく、“第2の脳”と呼ばれるほど優れた判断能力をもつ免疫の司令塔であることが明らかになりつつあります。小腸には“パイエル板”という外敵(病原菌やウイルスなどの有害物質)をチェックする監視カメラのようなものがあり、リンパ球とのチームプレーでその侵入を防いでいます。(※小腸には免疫を担うリンパ球の6割が集まっています。また外敵の情報は小腸だけでなく全身のリンパ球にも伝わり、体内への侵入がブロックされます。)

こうした小腸の驚異的な免疫システムが正常に働くためには、腸内環境が良好でなければなりません。「腸内細菌」は大腸だけでなく小腸にも数多く存在し、免疫の働きに重大な影響を与えているのです。

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